"Bud(バド)"

テレンス・クロフォード

Terence Crawford
42 0 0
(31KO)

プロフィール

国籍US
生年月日1987-09-28
構えスイッチ
身長175 cm
リーチ191 cm
主戦階級S.ミドル級

バイオ

テレンス・クロフォードは、1987年9月28日にアメリカ合衆国ネブラスカ州オマハで生まれた元プロボクサーです。2025年12月に無敗のまま現役を引退するまで、42戦全勝31KOという完璧な戦績を残し、ボクシング史上に輝かしい足跡を刻みました。世界5階級制覇を達成し、男子ボクサーとして史上初となる3階級での主要4団体王座統一という前人未到の偉業を成し遂げた、現代ボクシング界を代表するレジェンドです。

クロフォードはレスリング一家に生まれ、7歳の頃から高校時代までボクシングと平行してレスリングに取り組んでいました。アマチュアボクシングでは70戦58勝12敗の戦績を残し、2005年から2007年にかけて全米選手権やナショナル・ゴールデングローブ、パンアメリカン選手権などに出場しましたが、オリンピック代表選考では惜しくも漏れました。2008年3月14日、コロラド州デンバーでプロデビューを果たすと、初回26秒KO勝ちという衝撃的なスタートを切りました。

プロ転向後のクロフォードは着実にキャリアを積み重ね、2014年3月にはスコットランドでリッキー・バーンズを判定で下し、WBO世界ライト級王座を獲得して初の世界王者となりました。同年6月には元世界3階級制覇王者のユリオルキス・ガンボアを9回KOで退け、11月にはレイムンド・ベルトランに判定勝ちしてリングマガジン認定王座も手に入れました。この活躍により、2015年2月にはアメリカ合衆国ボクシングライター・アソシエーションから2014年の年間最優秀選手賞に選出されています。

2015年4月、クロフォードはスーパーライト級に転向し、トーマス・ドゥローメを6回TKOで下して2階級制覇を達成しました。その後、ディエリー・ジャン、ヘンリー・ランディーを連破し、2016年7月にはWBC世界スーパーライト級王者ビクトル・ポストルとの統一戦に判定勝ちして2団体統一を果たしました。2016年12月にはジョン・モリーナ・ジュニアを8回TKOで退け、2017年5月には北京オリンピック金メダリストのフェリックス・ディアスを10回終了時棄権に追い込みました。

そして2017年8月19日、クロフォードはボクシング史に残る快挙を成し遂げます。ネブラスカ州リンカーンでWBA・IBF世界スーパーライト級統一王者ジュリアス・インドンゴと対戦し、3回TKOで圧勝。スーパーライト級で史上初となる主要4団体統一を達成しました。男子では2005年のジャーメイン・テイラー以来、女子を含めても史上4人目という歴史的偉業でした。この功績により、ESPNやヤフー・スポーツから2017年度の年間最優秀選手賞に選出されています。

2018年6月、クロフォードはウェルター級に階級を上げ、MGMグランド・ガーデン・アリーナでWBO世界ウェルター級王者ジェフ・ホーンと対戦しました。9回TKO勝ちで3階級制覇を達成し、ESPY賞のベストファイター賞やWBOの2018年度年間最優秀選手賞を受賞しました。その後、ホセ・ベナビデス、アミール・カーン、ケル・ブルック、ショーン・ポーターといった強豪を次々と撃破し、ウェルター級での支配を確立していきました。特に2021年11月のポーター戦では10回に2度のダウンを奪ってTKO勝ちを収め、この試合を最後に2011年から所属していたトップランク社からの離脱を宣言しました。

2023年7月29日、クロフォードのキャリアにおいて最大の試合が実現します。ラスベガスのT-モバイル・アリーナで、WBA・WBC・IBF世界ウェルター級統一王者エロール・スペンス・ジュニアとの4団体王座統一戦が行われました。2回と7回に計3度のダウンを奪うなど終始圧倒し、9回TKO勝ちで男子ボクサーとして史上初となる2階級での主要4団体王座統一に成功しました。両選手はそれぞれ約36億円のファイトマネーを稼ぎ、ボクシング史上屈指のビッグファイトとなりました。

2024年8月には4階級制覇を目指してスーパーウェルター級に挑戦し、ロサンゼルスのBMOスタジアムでWBA世界スーパーウェルター級王者イスラエル・マドリモフと対戦。判定勝ちでWBA王座とWBO暫定王座を獲得し、4階級制覇を達成しました。そして2025年9月13日、クロフォードは2階級上のスーパーミドル級で、無敗の絶対王者サウル・アルバレスに挑戦しました。ラスベガスのアレジアント・スタジアムに7万482人もの大観衆を集めたこの歴史的一戦で、クロフォードは判定勝ちを収め、男子ボクサーとして史上初となる3階級での主要4団体王座統一と5階級制覇を同時達成するという前人未到の偉業を成し遂げました。

クロフォードの戦績の特徴は、その圧倒的な技術力と適応能力にあります。サウスポーとオーソドックスの両構えを自在に使い分け、相手の特徴を試合中に分析して対応する高いボクシングIQを持っています。42戦全勝31KOという数字が示すように、判定でも勝てる技術力とKO力を兼ね備えた完成度の高いボクサーでした。ライト級からスーパーミドル級まで5階級を制覇しながらも、各階級で圧倒的なパフォーマンスを見せ続けたことは、彼の身体能力と技術の高さを物語っています。特にスーパーライト級、ウェルター級、スーパーミドル級での4団体統一という偉業は、単なる階級制覇を超えた、その階級における完全支配を意味します。

クロフォードのキャリアにはいくつかの印象的なエピソードがあります。2016年4月には車の修理工場でのトラブルから法的問題に発展し、懲役90日執行猶予2年の有罪判決を受けるという出来事もありました。また、長年所属したトップランク社のCEOボブ・アラムとの確執も有名です。アラムはクロフォードの試合で損失を被ったと公言し、クロフォードのプロモーション能力を批判しました。これに対してクロフォードは「私はファイターであってプロモーターではない」と反論し、2021年にトップランク社を離脱。その後、アラムとトップランク社に対して人種差別的発言があったとして約11億円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。

興味深いことに、クロフォードはレスリングのバックグラウンドを活かして、UFCのコナー・マクレガーとの総合格闘技ルールでの対戦にも意欲を示していました。2020年にはトップランク社のアラムがマクレガーとのボクシングと総合格闘技の2試合契約を提案し、クロフォード自身も「準備期間を長めにとれば誰とでも競合できる」と自信を見せていました。また、2025年10月には日本を訪問し、帝拳ジムで那須川天心と交流したほか、RIZIN榊原信行CEOとのプライベートランチを楽しむなど、格闘技界全体への関心の高さを示しています。

2025年9月28日、地元オマハでの3階級4団体王座統一の祝勝パレード直後には、無謀運転の疑いで警察に停車を命じられるという出来事もありました。同乗者の所持品から合法的な拳銃が発見され、4人全員が銃を突きつけられる事態となりましたが、最終的にクロフォードは無謀運転で告発されただけでした。オマハ市長と警察署長は共同声明で遺憾の意を表明し、この街が誇るチャンピオンを称える日がこのような形で終わったことへの悲しみを述べています。

2025年12月3日、WBCは直近2試合での王座戦の認定料未払いを理由にクロフォードのWBC世界スーパーミドル級王座を剥奪しました。その13日後の12月16日、クロフォードは自身のSNSとYouTubeチャンネルを通じて「もはや何も証明する必要のない、偉大な選手として去って行く」「このスポーツに全てをささげた。今後のことはもう決めている。そして今、その時が来た」と述べ、無敗のまま現役引退を表明しました。