サウル・アルバレス
プロフィール
| 国籍 | MX |
|---|---|
| 生年月日 | 1990-07-18 |
| 構え | オーソドックス |
| 身長 | 173 cm |
| リーチ | 179 cm |
| 主戦階級 | S.ミドル級 |
バイオ
サウル・アルバレスは1990年7月18日にメキシコで生まれたプロボクサーで、愛称の「カネロ」は赤毛に由来するスペイン語でシナモンを意味します。8人兄弟の末っ子として生まれ、兄弟にも複数のプロボクサーがおり、ボクシング一家の出身です。13歳でボクシングを始め、中学校を中退してボクシングに専念しました。アマチュア時代にはメキシコジュニア全国大会で優勝するなど実績を残し、2005年10月に15歳でプロデビューを果たしました。デビュー戦から順調に白星を重ね、若くして頭角を現していきます。
プロ転向後のアルバレスは驚異的なスピードでキャリアを積み上げていきました。2009年にはWBC世界ウェルター級ユース王座を獲得し、2010年にはラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナでアメリカ本格デビューを果たします。この試合では初回にダウン寸前の大ピンチに陥りましたが、逆転でTKO勝ちを収め、その精神力の強さを証明しました。2011年3月には20歳でWBC世界スーパーウェルター級王座を獲得し、世界チャンピオンの座に就きます。その後、元3階級制覇王者シェーン・モズリーや元IBF世界ウェルター級王者カーミット・シントロンなど、経験豊富な強豪を次々と撃破していきました。
2013年9月、アルバレスのキャリアにおいて最大の試合が実現します。当時無敗を誇っていたフロイド・メイウェザー・ジュニアとの対戦です。この試合は「THE ONE」というキャッチフレーズが付けられ、チケットは発売からわずか2日で完売となる注目の一戦でしたが、アルバレスは技術、ディフェンス、スピードの全てでメイウェザーに圧倒され、プロ初黒星となる判定負けを喫しました。メキシコでの視聴率は40%を超え、PPV収入は当時の最高記録を更新するなど、商業的には大成功を収めた試合となりました。この敗戦後もアルバレスは着実に実力を磨き続け、2015年11月にはミゲール・コットを判定で破り、WBC世界ミドル級王座を獲得して2階級制覇を達成しました。
アルバレスの戦績で特筆すべきは、複数階級での世界王座獲得と、トップファイターとの対戦を厭わない姿勢です。2016年5月にはスピードとフットワークに定評のあるアミール・カーンを右ストレート一撃で失神させ、圧倒的なパンチ力を見せつけました。2017年9月と2018年9月には、当時ミドル級最強と評されていたゲンナジー・ゴロフキンと2度対戦しています。1戦目は引き分け、2戦目は判定勝ちという結果でしたが、両試合ともボクシングメディアや関係者の多くがゴロフキンの勝利と採点しており、判定には疑問の声が上がりました。それでも、最高レベルの相手と互角以上に渡り合ったことで、アルバレスの実力は世界的に認められることとなりました。
2018年12月にはロッキー・フィールディングを3回TKOで破り、WBA世界スーパーミドル級王座を獲得して3階級制覇を達成しました。さらに2019年11月には、2階級上のライトヘビー級でWBO世界王者セルゲイ・コバレフに挑戦し、11回TKO勝ちで4階級制覇を成し遂げます。この勝利により、アルバレスはWBA世界ミドル級スーパー王座、WBC世界ミドル級フランチャイズ王座、WBA世界スーパーミドル級レギュラー王座と合わせて3階級王座同時保持という偉業を達成しました。スーパーウェルター級からライトヘビー級まで幅広い階級で世界王座を獲得したことは、アルバレスの適応力の高さとボクシング技術の多様性を物語っています。
アルバレスのボクシングスタイルは、強打と正確なパンチ、そして優れたボディワークが特徴です。特にボディブローは彼の得意技であり、多くの対戦相手をボディへの攻撃で崩してきました。カウンターパンチも得意としており、相手の攻撃に合わせて強烈な一撃を放つ能力に長けています。ディフェンス面でも、上体の動きを使ったスリッピングやローリングで相手のパンチをかわす技術を持っており、攻守のバランスが取れたオールラウンダーと評価されています。また、試合を重ねるごとに戦術の幅を広げており、経験を積むことで着実に成長を続けているボクサーです。
キャリアの中では様々なエピソードも生まれています。2011年には同じジムでトレーニングしていたウリセス・ソリスへの暴行事件で告訴されるという騒動がありました。2018年には、ゴロフキンとの再戦を控えた時期に、ドーピング検査で禁止薬物クレンブテロールの陽性反応が検出され、6カ月間の資格停止処分を受けました。アルバレスは汚染された肉を食べたことが原因と主張しましたが、ゴロフキン陣営からは激しく非難され、ボクシング界を揺るがす大きな問題となりました。2020年には、ストリーミング配信サービスのDAZNとファイトマネーを巡って対立し、契約違反として280,000,000ドルの損害賠償を求める訴訟を起こすなど、リング外でも注目を集める出来事が続きました。
商業的な成功という面でも、アルバレスは現代ボクシング界を代表する存在です。2018年にはDAZNと5年11試合365,000,000ドル、日本円にして約410億円という破格の配信契約を結び、ボクシング史上最高額の契約として話題になりました。メイウェザー戦やゴロフキン戦では、PPV収入が記録的な数字を叩き出し、1試合で数十億円規模のファイトマネーを稼ぐなど、ボクシング界のトップスターとしての地位を確立しています。メキシコでは国民的英雄として扱われており、毎年9月のメキシコ独立記念日の週末に試合を行うことが恒例となっていました。2013年にはメキシコ大統領との面会も果たしており、スポーツの枠を超えた影響力を持つ存在となっています。
現在のアルバレスは、ボクシング界において最も影響力のある選手の一人として君臨しています。メイウェザーに敗れた唯一の黒星を除けば、トップレベルの相手を次々と撃破し続けており、その実力は誰もが認めるところです。複数階級での王座獲得、統一戦への積極的な姿勢、そして圧倒的な集客力とPPV販売力により、現代ボクシング界の顔として君臨し続けています。判定に疑問が残る試合もありましたが、それでも最高峰の相手と対戦し続ける姿勢は、多くのボクシングファンから評価されています。メキシコ出身のボクサーとして、フリオ・セサール・チャベスやファン・マヌエル・マルケスといった偉大な先輩たちの系譜を継ぐ存在として、今後もボクシング界を牽引していくことが期待されています。